2026.07.15|第1回
父に聞けなかった話を、絵本にする
今、とても後悔していることがあります。どうしてもっとちゃんと、父親に話を聞いておかなかったんだろう?——ということです。
この絵本は、私の父が子どもの頃に経験した「甲府七夕空襲」の話が元になっています。1945年7月6日の深夜、甲府の町が焼夷弾で焼かれた夜。怖くておなかが痛くなり、うんこがしたくなったから命が助かった。避難した防空壕に爆弾が直撃したから——。
信じられないような話ですが、実話です。ただ、父はこの話を私にはほとんどしませんでした。「空襲のときにうんこがしたくなった話」を聞かされたのは、孫である私の息子だけ。そして父は数年前、多くを語らないまま病気で亡くなりました。
わからない部分は、想像で埋めるしかありませんでした。同じ空襲を経験した義母やその友人に話を聞き、資料や本を読み、できるだけ当時の状況に近づけたつもりです。それでも、これはフィクションです。でも——「フツーの子ども」が経験した、本当にあった夜の話でもあります。
戦争が終わって80年以上。話を聞ける人は、どんどん少なくなっています。だからこの日記では、絵本ができるまでの過程と一緒に、「身近な人の戦争の話を聞いて、記録すること」の話も書いていくつもりです。あなたの家にも、きっと「うんこの話」みたいな、小さくて忘れられない話が眠っているはずだから。